メール営業は断られてからが勝負

メール営業は断られてからが勝負

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テレアポは、お客さまを選別するための作業。このような記述を目にしたことがあります。見込み客とコンタクトを取る中で、継続して追うべきか、手を引くべきかを判断する。電話をかけて、お客さまにニーズがありそうなら面談を打診する。直接会って話ができないなら、資料を送ったり、メールを送ったりして継続的にフォローする。「営業に来なくていい」とか「ニーズがない」と言われるのは当然だから、そのたびに心を折ってはいけない。営業活動はただの選別作業だ。そんな記述だったと思います。

メールやフォームへの営業は何のためにやっているのか

この「選別作業」を間違えている人が多いように感じます。ひどいケースだと「特に必要ありま……」まで言ったところで電話をガチャリと切られる。こんなことが50回に1回くらいはあります。相手にしてもらえないからイライラしているのか、可能性がないなら話す必要はないと1分1秒を惜しんで次のアプローチに気持ちが向いているのか、理由は分かりません。

話の途中で一方的に電話を切られたらどうでしょう。そんな電話をかけてくる会社のことは好きになれませんし、悪い意味で記憶に残ります。「○○社からの電話はすぐに断るように」と社内で通達を出しているケースもあります。

最近、メールでも電話の「ガチャ切り」に近い印象を抱くことがあります。私はメール営業のプロとして仕事をしているので、さまざまな営業をたくさん受けて、そこから傾向を読み取ったり分析したりしています。ホームページのフォームから届いた問い合わせには一つ一つ丁寧にメールで回答し、お断りしています。

最近も次のようなメールを送りました。

○○様

お世話になっております。
アイ・コミュニケーションの平野です。

このたびはフォームからのご連絡ありがとうございます。

リスティング広告のご提案は多数受けていますが、
今は一社様に絞って依頼をしている状態です。

お役に立てず恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

(以下、署名や引用文などは省略)

問い合わせフォームは私のお店のようなものです。やってきた人には、きちんと接客しますし丁寧に扱います。一方的な営業であっても無視することはなく、理由をそえて断ります。フォームから入ってくる一方的な営業に返信する人は1割にも満たないというのが私の印象です。

今回の事例では「リスティング広告を出しています。しかし、あなたの会社に依頼はしません」という内容の返事をしました。これが電話だったら「今、依頼している会社は成果を出していますか?」「成果がもっと上がる提案を聞きたいと思いませんか?」「今の方法が正しいか無料で診断しますよ」など、あの手この手を使って話を続けてくるはずです。

メールでお客さまの声を聞く

メールでのコミュニケーションは、断られてからがスタート。メール営業は一方的なDMではありません。相手がサービスを利用していると分かった。しかも、返信するということは、会話する意志を持っているということだと分かります。せっかく相手が返信してきたのに、それを無視するのはもったいでしょう。

例えば、私の返事に対して以下のような返信をしたら、次につながる可能性があるのではないでしょうか。

平野様

お世話になっております。
○○会社の◇◇です。

このたびは丁寧なご返信ありがとうございます。
このような連絡をした際、返信してくださる方は一握りのため、
非常に嬉しく思います。

すでにお取引先があることは承知しております。
差し支えない範囲で構いませんので、現在のお取引先に改善してほしいことや
さらなるご要望などを伺えないでしょうか。

やはり、どのようなサービスも100点ということはないと思います。
1点でも、2点でも足らない部分をお聞きして、
平野様のお役に立てたらと考えております。

それでは、よろしくお願いいたします。

(署名省略)

今回は短い返信例です。長文だと相手の負担になり返信を迷われることがあります。現在の取引先を否定するのではなく「1点でも足らない」という聞き方をして、改善点や要望を思い出してもらうようにしています。これが「不満な点があると思いますので」や「弊社ほどのサービスを提供できる会社は他にはありません」などと敵対するような書き方をすると嫌われる可能性があります。

返事がなかったら

このあと、メールのキャッチボールが始まれば、どんな点に困っているのか、その解決策がどこにあるのか、どの程度の金額がかかるのか、必要な情報を整理するために「まずは情報交換をしませんか?」という感じでアポイントを取りにいってもよいでしょう。

途中で返事がこなくなっても、そのままにしてはもったいない。メールで作ったご縁という名の「糸」。これを自分から断ち切らないように。再度アプローチをする際、全く同じ内容を「再送です」と書くのは芸がありません。相手がメールを見逃していると決めつけているようにも読めるので、別のアピールポイントを伝えます。

例えば、次のように書くのはどうでしょう。

平野様

お世話になっております。
○○会社の◇◇です。

先日は、フォームからお送りしたリスティング広告の提案に対して
丁寧なご返信をいただきまして、ありがとうございます。

その後、ご返信をいただけなかったようですので、
再度、角度を変えてメッセージをお送りしました。

前回は、現在お付き合いのある広告代理店様が100点に満たない場合、
どのような点に改善の余地があるのかお聞きしました。

・何を基準に判断したらいいか分からない
・もっと成果を出したいが具体的な改善点や要望が言葉にならない

このようなご相談をいただくこともございます。
そこで、弊社が持つ評価基準を簡単にご紹介しますので、
ご検討材料の一つに加えていただければ幸いです。

(この後、具体的な提案を書きますが、ここでは以下割愛)  

営業メールの目的を「選別」とするのではなく「返信をもらうこと」とする。やりとりをしていく中で、本当の選別が始まります。どこかに不満な点や改善点があるはずです。お客さまが大事にしている価値観があり、そこと合致していない点があるかもしれません。お客さまが気付いていないこともあります。その点をあぶり出していきましょう。

メール営業は断られてからが勝負
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平野友朗

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役。一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事。実践塾シェアクラブ 主宰。 1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育・改善の第一人者として知られ、メールコミュニケーションの専門家。メールに関するメディア掲載1500回以上、著書32冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールやメルマガなどを駆使して1万社以上の顧客を開拓。メールのスキルアップ指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などに数多く携わる。官公庁、企業、団体、学校での講演や研修、コンサルティングは年間150回を超える。日本初のビジネスメール教育事業や検定試験を立ち上げるなど、ビジネスメール教育の普及に尽力している。
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