営業メールにKPIは必要か?

営業メールにKPIは必要か?

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営業の現場では、架電や訪問、取引の件数、売上額など、常に数字がつきまといます。メールの送受信数が指標となることもあります。メールが倍になれば売上も倍になるなら、メールの通数を目標に加えてもよいでしょう。でも、メールの通数が売り上げと比例しないなら、目標にすべきではありません。そこで今回は、営業メールの数値目標について解説します。

何をKPIとして営業するのか

コロナ禍により対面での営業が難しくなりました。飛び込み営業をしようものなら「こんなときに飛び込みで来るとは、何を考えているんだ」なんて思われ、会社に電話をかけても相手がテレワーク中でつながらないこともあります。

そうなると増えるのは、メールや問い合わせフォーム、ダイレクトメールなどの送付物を活用しての営業です。ダイレクトメールなどは郵便コストがかかるので、コストがかからないメールが選択されるのは自然なことでしょう。

今まで営業のKPI(Key Performance Indicator)といえば、主に訪問の件数でした。訪問の件数が増えれば増えるほど、受注の件数は増えるので、1カ月に30件訪問する営業マンと100件訪問する営業マンでは倍以上の差が出ることもあります。

例えば、電話をかけて新規のアポイントメントを取り、初回の面談では自社の紹介をして相手の課題や要望を聞く。二回目の面談で、具体的に提案して、見積もりを提示した後、何度かのやり取りを経て受注につながるとします。単純な過程ですが、以下を見ると、何をKIPにすべきかが見えてきます。

電話(新規)→初回訪問→2回目の訪問(提案・見積もり)→受注

営業マン「A」600→30→9→3
営業マン「B」1500→100→20→8

受注を増やしたければ、初回訪問を増やせばいい。だから、面会の約束を取り付けるための電話の件数を指標として、営業活動をコントロールしてきました。受注を増やすためには何かしらのKPIが必要ですが、訪問できなくなった今は何を指標にすべきでしょうか。

Zoomなどを使ったオンライン商談、メールや問い合わせフォームからの営業メールをKPIに設定しているかもしれません。しかし、ここには大きな落とし穴があります。

メールをKPIにしてはいけない

メールには「目的」が必要です。営業メールを送る目的は、商談を前へ進めること。商談を動かせないメールは、意味のないメールです。初回メールのゴールは「返信をもらう」ことなので、返信がもらえないメールは改善が必要なメールです。

商談件数を増やすために「アポイントを増やしなさい」、アポイントがとれないなら「メールを増やしなさい」という指導を耳にすることがあります。実は、これには問題があります。「メールを増やしなさい」といわれたら、メールを送ることが目的に変わってしまうからです。

メールは送って終わりではありません。商談を進めるためのメールであるべきなのに、送ることだけに注意が集まると、1秒でも短い時間でメールを作成して大量に送ることしか頭になくなるのです。誰もが特有の課題や要望を持っています。そんな相手に対して、工夫のないメールを量産して送ったのでは、商談が生まれることも、進むこともないでしょう。

メールを早く送ろうと思ったら、次のような方法が考えられます。

BCCで一斉送信

過去の名刺データやホームページで調べた問い合わせ先メールアドレスメールをBCCに入れて、一斉に送ります。互いのメールアドレスが見えるTOやCCは使いません。同報配信ソフトを契約していなくて、同じ内容の文面で同時に多くの人に送信したいとき、このような送り方が選ばれます。ただ、メールの本文には受信者の名前が書いていないので、不特定多数に送っている機械的な印象を与え、反応は期待できません。

個別にメールを送信

一斉送信は手間をかけずに件数は稼げるけれど、反応が薄い。それに比べて、一対一のメールは、一律に扱っている感じはなくなります。反応ではなく件数重視であれば、メールの文面をコピー・アンド・ペーストするのが簡単です。アルバイトを雇ってメールを送る場合、1通につき1分もあれば、宛名を変えて、内容を確認して、送信することができるでしょう。時給が1500円なら、1500円÷60通=25円。つまり1通25円で送れる計算です。

ただ、このような送り方をしても、ほとんど手ごたえはないでしょう。なぜなら、どの会社にも同じ内容の文面でメールを送ることになるからです。受信者は「迷惑な営業メール」「読む必要がないメール」と判断します。反応が悪くて当然です。

でも、メールの送信数にこだわっていると、このようなメールを何度も送ってしまいます。何度も迷惑なメールを受け取った受信者は何を思うかは、言うまでもありません。

これらが、メールの送信数をKPIにする弊害です。メールの通数は増えても受注は増えず、かえって受注が遠のくこともあり得るのです。

電話とメールは違う

今まで電話の件数をKPIにしていたのをメールに変えただけなのに、なぜうまくいかないのでしょうか。電話は同時進行のコミュニケーションです。相手に伝え、すぐさま反応を見ることができます。詳しい説明を求めてきたり、興味がないと言われたり、怒り出したり、電話をいきなり切られたり。そのような反応があるから、自然とその理由を考えるようになるのです。

電話をいきなり切られたら、次のように予測ができるでしょう。

  • ・相手の話をさえぎってしまった
  • ・謙遜しすぎて
  • ・強引に売り込んでしまった
  • ・こちらの話すペースが速かった
  • ・ごまかすような言い方をした
  • ・態度が横柄だった
  • ・要領を得ない説明をした

他にも多くの理由が考えられます。そこに気付くことで、営業としても成長していけます。

メールの場合は、どうでしょうか。メールを送信して、すぐに反応はえられません。リアルタイムで改善することができず、問題は先送りにされがちです。

メールをKPIにするならば、反応が見えない相手のことや理由を突き詰めて考え、改善を続けられるかどうかにかかっています。そこが、迷惑メールになるか、商談を進める営業メールになるかの分かれ道ともいえるでしょう。

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平野友朗

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役。一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事。実践塾シェアクラブ 主宰。 1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育・改善の第一人者として知られ、メールコミュニケーションの専門家。メールに関するメディア掲載1500回以上、著書32冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールやメルマガなどを駆使して1万社以上の顧客を開拓。メールのスキルアップ指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などに数多く携わる。官公庁、企業、団体、学校での講演や研修、コンサルティングは年間150回を超える。日本初のビジネスメール教育事業や検定試験を立ち上げるなど、ビジネスメール教育の普及に尽力している。
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