脱DMなアプローチ

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メール営業の効果が出ず、苦戦しているという声を耳にします。私の会社にも問い合わせフォームから、あるいは個人のメールアドレス宛てに、毎日のように営業メールが届きます。そして、大抵のメールが問題を抱えています。それらの行為にどれだけのリスクがあるのか。今回は、不用意な営業メールが抱えるリスクについて解説します。

フォームからの営業行為が当たり前になった今

数年前まで、ホームページの問い合わせフォームからの営業行為は、ほとんど見られませんでした。あったとしても、その企業に対する真面目な問い合わせでした。公開されているメールアドレスがない、もしくは問い合わせ部署が分からないなどの理由から、問い合わせフォームを使っているケースが大半でした。

だから、私自身もフォームから問い合わせがあると、断る場合であっても1件1件、丁寧に返信していました。なかには、私が送ったお断りメールに返信がきて、やり取りが続き、面談することになったケースも少なくありません。

しかし、ここ2~3年で状況が一変しました。お断りメールを送っても、ほぼ返信はありません。届く営業メールも、こちらのことを考えた内容ではなく、無作為に送っているような内容ばかりになりました。

「下手な鉄砲も数撃てば当たる」と、とにかくたくさん送っているのでしょう。お断りのメールに対して、お礼を述べたり、さらに質問をしたりするのは非効率。そう考えて、仕事につながらなさそうな返信は完全に放置しているのでしょう。

私も無駄なことはしたくありません。そのため、今は問い合わせフォームから営業メールが来ても、ほとんどお断りのメールすら送らないようになってきました。おそらく、このような対応になったのは私だけではないはずです。

以前は、「メールボックスは私のお店」だと考えていました。どんな問い合わせだって、お店に入ってきた人だから邪険にせず、丁重におもてなしをする。こちらの態度がよければ、そこからお客さまになってもらえるケースもありました。

しかし、今では、問い合わせフォームから来る営業メールは、完全に敵対行為であり、嫌われています。フォームからの営業行為が当たり前になった今だからこそ、送り方を再検討するべきです。そうしないと、企業のブランド力を落とすことにもなりかねません。

営業メールは、迷惑メールフォルダ行き

営業メールは、システムを使って一気に送るケースが多いでしょう。そのため、相手が「迷惑メールボタン」を押したり、スパムフィルターに引っかかったりするなどして、迷惑メールフォルダに届くことが増えています。迷惑メールフォルダに届く可能性が高まっていると断言できます。

迷惑メールフォルダに届いたメールを見て「あ。やっぱり、この営業メールは迷惑だなぁ」と思うことも珍しくありません。「○○会社は迷惑メールを送る会社だ」というように関連付けて記憶される可能性があります。

このようなことが繰り返され、毎回、迷惑メールボックスに届くとしたらどうなるでしょう。どこかの展示会に出展しても、広告を出しても「ああ。あの迷惑な会社だな」と敬遠される可能性があるのです。「迷惑な会社」というブランディングを強めるためにメールを送っているようなものです。

それなら「解除ができるように解除用のリンクを設定しよう」と営業メールを送る側は考えるかもしれません。しかし、相手が「知らない相手のリンクは押したくない」「フィッシング詐欺にあうのでは」と考えていたらクリックすらしてもらえないかもしれないのです。その結果、配信リストは整備されていない状態のままになります。

私は、メールを送ってきた相手をある程度信頼できると思った場合(住所や電話番号が書かれている、実在する会社だと分かった場合など)、解除用のリンクをクリックすることがあります。しかし、たまに次のような画面が表示されることがあります。

脱DMなアプローチ

このような警告が出たら、怖くてクリックできません。その結果、求めていない営業メールがまた届き、嫌な気持ちが募ります。「相手が解除しないから、いつか仕事になるのでは」という考えは甘すぎます。メールを1通送るごとに、相手の不快感が高まっている可能性があるのです。

顧客接点を持ち続けることが重要です。相手のマインドシェアを獲得するためにメールを送り続けましょう。これは、成果を上げるための正しい努力です。しかし、これには条件があります。相手がこちらに対して悪い印象を持っていないということ。悪い印象を持っている相手からのメールは、ただの迷惑行為です。それを続ければ続けるほど、企業のブランド力も低下します。

初めて問い合わせをするときや営業メールを送るときは、ニュートラルな状態です。ただ、そこからの関わり方(メールの内容や頻度)によって、評価がプラスやマイナスに変化するのです。

脱DMアプローチ

「下手な鉄砲も数撃てば当たる」という考えを、まず捨ててください。対象を明確にして、相手に響くアプローチにこだわってください。これしか、メール営業を成功させる方法はありません。

メール営業にしても、フォーム営業にしても、相手のことを調べてからアプローチするべきです。その際、次のような情報を盛り込むと効果的です。

● 相手のことを何で知ったのか
● なぜ連絡をしたのか
● 自分たちが何者か(他社との差別化)
● どんな貢献ができるのか
●  追加情報をえるための信頼度の高いウェブサイト

相手のことを調べなければ、どんな貢献ができるのかも書けません。先日、Instagramの運用代行の会社からメールが届きました。書いてある事例は、弊社と全く異なるものばかり。コンサルティング会社なのにエステ店の事例を紹介されても説得力がありません。結果、私にとっては迷惑な企業リスト行きです。

初めからDMのように成功事例を並べた長いメールを見かけますが、完全にメルマガのようなものなので、無視される傾向にあります。相手の反応をしっかりとろうと思ったら、相手を一人の人間(会社)として考えてアプローチするべきです。

相手のことを考えて1通1通アプローチをする。そのほうが成果は大きいばかりではなく、自社のブランドイメージを保つことができます。アプローチ先がたくさんあるならば、せめて業種などのグループに分けるべきでしょう。グループに分ければ、多少なりとも響くようになるのは明白です。

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平野友朗

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役。一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事。実践塾シェアクラブ 主宰。 1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育・改善の第一人者として知られ、メールコミュニケーションの専門家。メールに関するメディア掲載1500回以上、著書32冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールやメルマガなどを駆使して1万社以上の顧客を開拓。メールのスキルアップ指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などに数多く携わる。官公庁、企業、団体、学校での講演や研修、コンサルティングは年間150回を超える。日本初のビジネスメール教育事業や検定試験を立ち上げるなど、ビジネスメール教育の普及に尽力している。
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