お客さまの質問を無視していませんか?

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メールの返信はコミュニケーションの一環です。返信を読んだ相手は、喜んだり怒ったり、さまざまな反応をします。返信内容によっては、取引がなくなってしまったり、追加の受注がもらえたり。たった1通のメールで、その後の仕事に変化が生まれます。そこで今回は、お客さまからの質問と返答をテーマに、メール対応力がなぜ必要なのかについて解説します。

質問と回答が一致していない

企業研修で、お客さまからの質問や問い合わせへの返答メールを見せていただくことがあります。そうした実際のメールを研修の題材にすると、受講生は自分事として捉えやすくなり、より真剣になります。受講生が書いているメールの傾向を知りたいという意図もあります。メールのやりとりを見て毎回、気になるのが「質問と回答のズレ」です。

お客さまは自分の言いたいこと(主張、意見、依頼など)しか書きません。そのため、言葉足らずになることがあります。一方、営業担当者も自分の言いたいことを中心に書いてしまうことがあります。そこで質問と回答のズレが生じます。営業担当者がお客さまの質問を読み間違えているケースは多々あります。

まずは、次のメールを見てください。お客さまからの問い合わせメールです。

平野様

お世話になっております。鈴木です。

予約したイベントですが、出張と重なったためキャンセルさせてください。
ウェブサイトから予約はできますが、キャンセルはできませんでした。

お客さまの主張は明確です。「予約したイベントをキャンセルしたい」ということ。返信すべき内容はキャンセルすることができるかどうかです。キャンセルができるなら「キャンセルを承りました」、キャンセルができないなら「~~のため、キャンセルをお受けすることはできません」のように書けばよいでしょう。

ここで、お客さまの論点を見誤ると噛み合わなくなります。この問い合わせメールからは他に、どのようなお客さまの思考が読み取れますか。人によっては、出張と重なってしまい参加できなくなったという「申し訳なさ」(お詫びの気持ち)を読み取るかもしれません。「キャンセルはできませんでした」という一言をクレームだと受け取るかもしれません。

クレームだと受け取った場合は「ご不便をおかけし、大変申し訳ございません」「お客さまのお叱りを真摯に受け止め、さらに使いやすいウェブサイトを目指すことをお約束します」のように書いてしまうかもしれません。しかし、お客さまの論点が「苦情を言う」でないならば、そのような返答がとんだやぶ蛇になります。「意図を汲み取ってくれなかった」と落胆される可能性があります。

今回の場合は、次のようなメールを書ければ十分でしょう。

鈴木様

いつもお世話になっております。
アイ・コミュニケーションの平野友朗です。

ご連絡ありがとうございます。

○○イベントのキャンセルの件、確かに承りました。
次回の日程が決まりましたら、お知らせいたします。

それでは、引き続きよろしくお願いいたします。

(署名省略)

もし、システムの不具合でウェブサイトからキャンセルができなかったのであれば「ご不便をおかけし、大変申し訳ございません」と一言触れてもよいでしょう。

相手の質問を単純化する

相手の質問を読み解く力が弱いと感じるなら、メールを印刷して読むことをオススメします。本題ではない箇所に×印を付けて情報をできるだけ少なくし、相手の主張をあぶり出します。これだけでもメールをただ眺めているよりは、質問を理解しやすくなります。慣れてきたら×印で消すのではなく、質問だと思われる箇所に○印を付けてもよいでしょう。目的は相手の質問を正確に把握すること。質問に対する回答を明確に書きましょう。そして、送信ボタンを押す前に、質問と自分の書いた回答が一致しているかを必ずチェックします。

お客さまからの質問が「YES」「NO」で答えられるものならば、明確に「YES」「NO」で答えます。以前、生命保険会社で研修を行った際、受講生が書いているお客さまへの返答メールを見たところ、すべての返信が「一概には言えません」というような回答で唖然とした記憶があります。明確に答えられない場合であっても「通常は、加入できます。ただし、~~」のように回答することはできるでしょう。

回答の仕方を間違えると、お客さまは「回答してもらえない」と誤解する可能性があります。たとえば、次の文章は、質問と回答が一致しているでしょうか。

●質問
先日手術をしたばかりですが、マッサージは受けられますか。

●回答
当店でマッサージを受けていただく際は、手術をしたということを受付でお伝えいただくと、その部分を避けてマッサージさせていただきます。

一致はしていても言い回しがくどいため、読み手によっては不明確な回答だと感じるかもしれません。質問と回答が一致していることが一目で分かるよう、シンプルに回答します。

●質問
先日手術をしたばかりですが、マッサージは受けられますか。

●回答
はい。可能です。
受付の際に、手術の箇所についてお伝えください。

補足情報があれば、その後にまとめて書くと理解しやすくなります。

回答内容について常に意識を向ける

お客さまを無視しているわけではなくても、保身のための説明が増えれば、何が言いたいのか分からないメールになります。伝えたいことを一方的に長々と書けば、質問への回答が曖昧になります。そうした返答を受け取ったお客さまは「質問を無視された」「答えてくれない」と感じます。

自分の主張を伝えることは重要ですが、相手の主張を理解することが大切です。質問は何か。意図は何か。他の意味に読み取れる可能性があるなら、それらをすべて考慮して回答できると、誤解は減り、コミュニケーションの効率もよくなります。

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平野友朗

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役。一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事。実践塾シェアクラブ 主宰。 1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育・改善の第一人者として知られ、メールコミュニケーションの専門家。メールに関するメディア掲載1500回以上、著書32冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールやメルマガなどを駆使して1万社以上の顧客を開拓。メールのスキルアップ指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などに数多く携わる。官公庁、企業、団体、学校での講演や研修、コンサルティングは年間150回を超える。日本初のビジネスメール教育事業や検定試験を立ち上げるなど、ビジネスメール教育の普及に尽力している。
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