お客さまの状況を考えてアプローチする
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お客さまとの接点は、どのように生まれるのか。営業マンが飛び込みをしたり、展示会で名刺交換をしたり、自社のウェブサイトから問い合わせがあったり、特設サイトからホワイトペーパーのダウンロードがあったり。他にも、ダイレクトメールの返信やアンケートの回答なども考えられます。当然、入り口によって温度差があります。今回は、その温度差を考えたアプローチについて解説します。
全てのデータを同じように扱っていないか
問い合わせがあったら、そのデータをデータベースにすぐに格納し、全員に対して同じようなフォローをする。そのようなケースが思った以上に多いことに愕然とします。 この一文を読むと、そのような営業フローが非効率であり、成果も出にくいのは分かるはず。しかし、実際の営業の現場では、流入経路を見ずに、営業担当が勘や自分のタイミングでアプローチしているのです。 私は趣味と実益を兼ねて、ビッグサイトなどで開催されるIT系のイベントに行きます。そこで、名刺をたくさん渡したり、アンケートに答えたりします。そのサービスに興味があるということもありますが、どのような営業をされるのかが気になるのです。 アンケートに「詳しい話が聞きたい」「興味がある」と記載しても、営業マンから何のフォローもない。初めての接触は、一斉配信のメルマガということも珍しくありません。 そもそも、フォローの設計もできていないのに、なぜイベントに出展するのか。ただリードが獲得できればよく、フォローは前提としていないなら仕方ありません。しかし、多くの企業は、受注というゴールに向けた布石としてブースを出展しているはずです。
営業の流れを図に落とし込めるか
私は、メルマガセミナーの講師として呼ばれることが多いです。セミナーでは、メルマガ担当者にビジネスのフローを図式化してもらいます。自社について理解を深めてもらうためです。 展示会に出た場合、来場者と名刺交換をして、どのように名簿を作り、どのタイミングでフォローをするのか。フォローも何で行うのか。電話かメールか。お客さまのランクによって手段を変えるのかなど、細かく聞きます。 普段から運用を考えていれば、5分もあれば全体像が見えます。しかし、何も考えずに運用している場合は、白紙のままで止まるか、完成までに30分程度かかることもあります。 資料請求があった場合も同様です。資料を送る前に電話をするのか。到着した頃に電話をするのか。フォローはメールのみにするのか。「ただなんとなく」フォローしているのであれば、成果は上がりにくいでしょう。感覚ではなく、あらかじめ決めたタイミングで営業活動を行うことが重要です。 うまく回っている企業は、このフローが明快で納得感があります。顧客と出会い、信頼を作り上げていく。その後、面談や見積もりを提示する。このプロセスが見えていないと、資料請求されたら一方的に営業をしてしまい「まだ検討段階ではありません」と逃げの一言を言われてしまうのです。 私たちはビジネスメールの集合研修も行っていますが、問い合わせがあったらすぐに電話をして、必要がない限り深追いはしないと決めています。この営業フローについては図式化ができています。
お客さまの温度を感じる
お客さまとの最初の接点は、展示会、資料請求、飛び込み営業、テレアポからの商談など多岐に渡ります。同じ資料請求にしても、強い興味があるのか、比較検討する段階なのか、情報収集をしているのか、目的や状況には差があります。これを全て同じデータとして捉え、画一的なフォローをしたのでは意味がありません。 お客さまが、いますぐには必要としていないと判断したら、メルマガなどで継続的な情報提供に努める。逆に、いますぐに必要としている、導入時期が早いと判断したら、メルマガのようなフォローは一切ストップして、営業担当の個別アプローチに特化する。これが顧客心理を考えても一番納得感があります。営業担当と個別のやりとりをして検討を進めている最中なのに、いきなり一斉送信のメルマガが届いたら違和感を覚える人もいます。 これらを図に表すと次のようになります。
●検討に時間がかからない人
名刺交換→営業マンの個別アプローチ→商談→見積もり提示→導入 ●検討に時間が必要な人
名刺交換→営業マンの個別アプローチ→メルマガでのフォロー→相手のタイミングで声がかかる→商談→見積もり提示→導入 ●個別フォローが不要な人
名刺交換→信頼を生み出すステップメール→メルマガでのフォロー→相手のタイミングで声がかかる→商談→見積もり提示→導入 |
このように3パターンに分けると、相手の状況別の対応が見えてくるでしょう。確度の高いお客さまには、営業マンが個別にアプローチする。確度が分からないときは、個別アプローチをした後にメルマガで接触を保つ。確度が低くてニーズも分からないがフォローすべき相手には、自社への理解を深めてもらうために、ステップメールなどからメルマガへシームレスにつなぐのが有効です。 ホワイトペーパーをダウンロードした人は情報収集をしている可能性が高いので、強い営業(電話など)をすると引かれることもあります。その場合は、メールを送りつつ、相手がウェブサイトを見るなどの行動をトリガーとして次のアクションを起こしてもいいでしょう。
接点の維持こそが最大のテーマ
私は独立してから16年間、メルマガ『毎日0.1%の成長』を出し続けています。すでに2000号を超えた日刊メルマガです。このメルマガが営業マンとなって、顧客との関係を維持しています。15年前にメルマガを登録した人から初めて届いたメールが、企業研修やコンサルティングの依頼ということも珍しくありません。 長期的に接触を継続し、お客さまのタイミングで手を挙げていただく。ガツガツした営業ではないので、営業マンもストレスがありません。これが一つの営業スタイルとして確立している企業も多いです。 自動車のような買い換え頻度が低いものであっても、営業マンが定期的に接触したら、次に車検のときに声がかかったり、別の顧客を紹介してもらえたりする可能性もあります。人は、何かを欲しいと思ったら頭の中で検索します。そのときに「あの人にお願いしよう」「あの会社にしよう」と想起されるかどうかが重要です。メルマガを送り続けていれば、購読者の頭の中に存在できます。忘れられなければ、頭の中で検索したときに思い出してもらえます。頭の中にSEOを行うのがメルマガの役割です。
The following two tabs change content below.株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役。一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事。実践塾シェアクラブ 主宰。
1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育・改善の第一人者として知られ、メールコミュニケーションの専門家。メールに関するメディア掲載1500回以上、著書32冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールやメルマガなどを駆使して1万社以上の顧客を開拓。メールのスキルアップ指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などに数多く携わる。官公庁、企業、団体、学校での講演や研修、コンサルティングは年間150回を超える。日本初のビジネスメール教育事業や検定試験を立ち上げるなど、ビジネスメール教育の普及に尽力している。
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