脈がなくても感謝の気持ちを伝えていますか?

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問い合わせフォームやメールでの営業メール。それに対して返事を書いてくださる方は一定数いるはずです。その確率をはかりながら精度を高めるために、日々努力していることでしょう。営業は、くじ引きのような側面もあります。見込みがないと思ったら見切りをつけて次に進む。そのとき、つい不義理になってはいないでしょうか。そこで今回は、返事をもらったときの対応について解説します。

見切りをつけて効率だけを求めていないか

私の会社には毎月20~30通くらいの営業メールが届きます。もともと、その1通1通に返事を書くようにしていました。しかし、今では返事を書くことはどんどん減っています。

完全にテンプレートだと思われる営業メールにお断りの返事をしても、その後、何の連絡もないことが大半です。私の感覚ではお断りメールを送った後に「ご検討ありがとうございます」のような連絡がくるケースは1割程度。それであれば、こちらも無駄な労力を使う必要はないと考えるようになりました。非礼な人間に礼節をもって対応しても意味がないと感じるわけです。

実は、お断りをしたときの返信メールから話が広がり面談につながったケースもありました。メールだけでは伝え切れていなかった。そのことに営業マン自身が気付けたのでしょう。

断られたとしても、メールを読んでもらった、検討してもらった事実はあるわけです。そこに対しては感謝すべきでしょう。その際、相手の事業についての理解を示せば、そこから会話が広がるかもしれません。例えば、次のような返信をしたらどうでしょう。


平野友朗様
 
お世話になっております。
株式会社○○の××です。
 
このたびはご返信いただきまして、誠にありがとうございます。
 
平野様の集客に××の観点からお役に立てると確信しておりましたが、
今回はご縁がなかったと考え諦めます。

しかしながら、もし××についてお困りのことがございましたら、
いつでもお気軽にお知らせください。
 
成果を信じていただけるような事例を豊富に取りそろえ、
貴社に最適なご提案をさせていただきます。
 
今後ともよろしくお願いいたします。

このメールを読んで「そこまで考えてくれているんだ」「え?○○が得意なの」と引っかかりを覚えるかもしれません。このように、お断りメールに対するお礼メールから仕事につながる可能性もあるわけです。

そもそもお礼すら言えない人たち

先に説明したとおり、営業メールの一斉送信で断られたら、それ以上は掘り下げることができない。そのように考えて無視する人がいるのは理解できます。しかし、最近気になるのが「質問に答えない人たちの存在」です。私は「メールボックスは私のお店」と考え、営業メールにも基本的には返信をしています。特に、こちらのことをしっかり考えて提案していただけている場合には、誠意を持って答えるようにしています。

先日、あるPR会社から営業メール(問い合わせフォームから)が届きました。私が執筆した『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』(文響社)という書籍のPRを手伝いたいと書かれています。実は、その会社の社長とは10年以上前から面識があり、業務内容も知っていたので好感をもっていました。

具体的な書籍の名前を挙げて、どんなプランを提供できるのかが書かれています。興味がわいたので、こちらの情報を伝え、どのような協力をいただけるのか問いかけました。


(一部省略)
 
成果が出ることは、いろいろやりたいと思っています。
現状からどのくらい変わるか。
そのあたりを教えていただけたらと思います。
 
今まで28冊の本を出し、それなりに人脈もあるため、
出版社に声をかけて企画を持ち込むことは可能です。
 
また、メディアにも今まで1000回くらい取り上げてもらい、
それなりに業界での地位は作れたかと。
 
その上で、もう一歩先があるなら考えてみたいという感じですね。
ぜひとも詳細をお知らせいただけたらと思います。
 
(以下省略)

実際の文章はもっとボリュームがあり、丁寧に返信をしています。しかし、3日経っても返事がありません。おそらく、この営業担当は「手に負えないなぁ」「提供できるプランがないなぁ」と思ったのかもしれませんが、それならそうと返事をすべきでしょう。

ここで返事をしないと次の営業機会はありません。今後、同じ会社の別の人から営業メールがきたら「以前、○○さんが不誠実な対応だったので……貴社との取引には前向きになれません」と答えるかもしれません。もし、私の顧客から相談を受けたら、この事実を伝えた上で慎重に検討するように助言するでしょう。つまり、返信をしないという行為が未来の営業の芽を摘んでいることになるのです。

相手は生身の人間だと考える

「○○をお送りしましたのでご確認ください」と書かれたメールを受け取ったら、きちんと返事をする。ウェブサイトの問い合わせフォームから「○○について教えてください」と連絡をして答えてもらったのなら、お礼を伝える。これはコミュニケーションの常識だと思っています。

仮に、相手がAIなどを駆使して自動的に動いているなら、お礼を伝える必要はないでしょう。しかし、質問に答えてくれる相手が生身の人間であれば、そこに感情が生まれます。せっかく答えたのに役に立てたかフィードバックがない。時間をかけて調べたのに不誠実な対応をされた。このような行為は会社のブランドイメージを損ないます。

質問をする

答えてもらう

感謝を伝える

この最後の「感謝を伝える」というのは最低限のコミュニケーションです。これすらできていないと「常識がない人だ」と捉える人もいます。

営業メールを送って断られたとしても、検討してもらったのだから24時間以内にお礼を伝える。手に負えないと判断した場合でも、無視するのではなく24時間以内にしっかりと状況を説明する。当たり前のことだと思う人も多いでしょうが、実際にできている人は非常に少ないのが現状です。これをするだけで相手の印象も変わるでしょうし、受注率にも影響を及ぼすことでしょう。

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平野友朗

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役。一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事。実践塾シェアクラブ 主宰。 1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育・改善の第一人者として知られ、メールコミュニケーションの専門家。メールに関するメディア掲載1500回以上、著書32冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールやメルマガなどを駆使して1万社以上の顧客を開拓。メールのスキルアップ指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などに数多く携わる。官公庁、企業、団体、学校での講演や研修、コンサルティングは年間150回を超える。日本初のビジネスメール教育事業や検定試験を立ち上げるなど、ビジネスメール教育の普及に尽力している。
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