過剰な丁寧さは読む気を奪う

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お客さまが上で、営業者は下という意識を持っている人がいます。その考えでメールを書くと、過剰に丁寧なメールが生まれます。慇懃無礼という言葉があるとおり、丁寧すぎてかえって無礼になることや、丁寧なようで実は無礼なこともあり、本心として伝わらなくなります。そこで今回は、営業メールにおける丁寧さについて解説します。

過剰に丁寧なメールは喜ばれない

メール営業の現場で頻繁に見かけるのが、過剰に丁寧なメールです。尊敬語や謙譲語を多用し、インターネットで見つけた日常では使わない言葉を重ねたメール。それを読んだ相手は、敬意を感じて気分をよくするでしょうか。敬意は、TPOに合わせて、表現を使い分けて払うものです。

お客さまとの打ち合わせで訪問する際、通常はスーツなのにタキシードを着ていったら、どう思われるでしょうか。過剰にすれば、それだけ尊敬する気持ちを強く伝えられるというものではなく、かえって気持ちを疑われてしまうかもしれません。やり過ぎはよくないと分かっていただけるでしょう。

一般社団法人日本ビジネスメール協会が発表した「ビジネスメール実態調査2020」によると、仕事で1日に受信しているメールの平均は50.12通です。職位が上がれば、100通、200通ということも珍しくありません。場合によっては、毎日1,000通のメールをチェックするという人もいます。そのような人たちが求めているのは、用件や意図が瞬時に分かるメールですが、用件しか書かれていなければ不快感を覚える人もいるでしょう。

メールには宛名、挨拶、名乗り、要旨、詳細、結びの挨拶、署名の7のパーツを全て盛り込みます。そうすることで、不快感を与えず、用件や意図が瞬時に分かるメールになります。文章を丁寧にする前に意識すべきは、読みやすさや分かりやすさです。

次の文を読んで、どう感じますか。

本日は、弊社で企画をさせて頂いております○○勉強会のご案内で誠に失礼ながらメールでご連絡をさせて頂きました。

第一印象で「読みにくい」と感じるのではないでしょうか。「誠に失礼ながら」という言葉を見て「失礼だと思うならメールを送るな」と思う人もいます。失礼であっても大目に見てもらいたいという気持ちがあったとしても、この一言が入っているからといって失礼さが和らぐとは限りません。気がとがめるときに営業メールに書いてしまいがちな、完全に無駄な一言です。こういう言葉は使わないほうがよいでしょう。

謝る必要がないのに謝ったり、必要以上に謙遜したりすれば、慇懃無礼に映り、逆に失礼だと感じる人もいます。「誠に失礼ながら」の部分を削除すると、次のようになります。

本日は、弊社で企画をさせて頂いております○○勉強会のご案内でメールでご連絡をさせて頂きました。

これでもまだ、一文が長く、読点が一つしかなくて読みにくいと感じます。文章の意味の切れ目が分からないメールが一番読みにくいのです。イベント名をかっこでくくると次のようになります。

本日は、弊社で企画をさせて頂いております「○○勉強会」のご案内でメールでご連絡をさせて頂きました。

これで文章の構造が分かりやすくなってきました。次に気になるのが「させて頂く」という言葉。これが二つも入っています。この「頂く」は漢字ではなく、ひらがなにします。動詞として使用する場合は漢字、補助動詞として使用する場合は、ひらがなを使います。例えば「お茶を頂く」の「頂く」は動詞として使用しているので漢字。「お越しいただく」の「いただく」は補助動詞として使用しているので、ひらがなです。今回は、二つとも補助動詞として使っているので、ひらがなにします。

動詞と補助動詞を漢字にすると、漢字が続いて読みにくく、漢字が多くて難しく感じられます。どうしても「頂く」を漢字にしたいときは「させて頂く」を一文に二つではなく、どちらか一つにしたほうが読みやすくなります。

そもそも「させていただく」というのは、相手に許可を求めるような意図で使う言葉です。案内する許可がほしいというニュアンスなら、次のように書き換えてもよいでしょう。

本日は、弊社で企画した「○○勉強会」のご案内でメールでご連絡をさせていただきました。

「ご案内で」「メールで」と格助詞の「~で」が続いています。Wordなどで見ると「で」の下に線が引かれ「助詞の連続」と注意が出るはずです。読んでいて、構造も分かりにくいので改善します。「~の」が続く場合も、係り受けを調整して読みやすくしましょう。この文章を次のように書き換えてみました。

本日は、弊社で企画した「○○勉強会」のご案内でメールを送らせていただきました。

「メールという手段で連絡した」という部分を「メールを送った」に変えていますが、文章の表現しようとしている趣旨は変わりません。「させていただく」を残したいなら、このままでも問題はありません。相手に許可を取って送るというニュアンスではなく、こちらが主体的に送るという意図を盛り込みたいなら、次のように書き換えてもよいでしょう。

本日は、弊社で企画した「○○勉強会」のご案内でメールをお送りしました。

この文章が最終形だと考え、最初の文章と比べてみましょう。

(1)本日は、弊社で企画をさせて頂いております○○勉強会のご案内で誠に失礼ながらメールでご連絡をさせて頂きました。

(2)本日は、弊社で企画した「○○勉強会」のご案内でメールをお送りしました。

どちらの方が読みやすいかは聞くまでもなく(2)でしょう。では、(2)が失礼かというと、そうは感じません。丁寧であるとは、言葉遣いが礼儀正しいだけでなく、相手への配慮が行き届いていることです。丁寧であろうとするあまり(1)のように過剰に書けば、かえって読みにくく、言葉は丁寧だけど分かりにくくて配慮に欠けると思われることもあります。営業メールでも、読みやすさや分かりやすさを目的とした上で、表現は具体的に簡潔であることと、丁寧であることのバランスが大切です。

 

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平野友朗

株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役  一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事  筑波大学人間学類卒業。広告代理店勤務を経て2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。起業当初から発行しているメルマガ「平野友朗の思考・実践メルマガ【毎日0.1%の成長】」は2,000回以上配信。メディア掲載多数。著書31冊。
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